不動産契約の注意事項
当館領事部には、パリでのアパートなど住宅賃貸借にまつわるトラブルの相談が多く寄せられています。

• 入居する予定の物件に居住者がいて、予定日に入居できなかった
• 前払い金を振り込んだもののその後業者と連絡がとれなくなった
• 保証金(コーション)、敷金の返還に応じてくれない
• 法外な修理金を請求された
良い大家、良い不動産業者に当たるかどうかは巡り合わせの要素もあります。
しかしながら、リスクがあることを踏まえ、慎重に検討を行えば、トラブルも避けられるかもしれません。
なお、正式な法律に則った賃貸借契約ではない、いわゆるノワールと呼ばれる賃貸借でのトラブルは、解決が不可能に等しいのでご注意下さい。
参考:契約の仕組み
不動産の賃貸借契約は、大家と借家人の間でフランス語で締結されます。
通常、賃借料は前払いで、そのほかに保証金(コーション)として2か月分の家賃が必要になります。
保証金は退去時の清算や住宅の修理などに充てられ、全額返却される場合もあれば、何らかの費用に充当されることもあります。
また、保証金は退去時には返却されず、返却にひと月程度時間を要することがあり、これは法的にも認められています。
日本では敷金はほとんど戻ってこないと言われていますが、フランスでは戻ってくることが多いです。必ず退却時に確認してください。
これに加え、不動産業者が仲介した物件の場合には、仲介手数料(家具無は家賃1か月分、家具付は家賃2か月分が相場)が必要になります。 また、住宅総合保険の加入は義務になります。
一般的な契約確認事項
❖ 入居時期・鍵の受渡し方法
❖ 入居時に必要な費用(保証金、家賃、その他)
❖ 退去時の方法(敷金、保証金の返金方法)
❖ 家賃に含まれるもの(電気、水道、ガス)
❖ 家具付物件か家具無し物件の確認
❖ 毎月の家賃支払い方法
❖ 暖房の有無や動作確認(個別暖房か、中央暖房か)
❖ テレビ税、住宅税(Taxe d'habitation)の支払有無
❖ 電気、水道などの不具合時の連絡先の確認
リスクについても知ろう
不動産業者は、物件の仲介を持ち込んだ大家がどのような人柄なのかを知っているとは限りません。
不動産業者は物件の仲介を行うのみ、契約はあくまで、大家と借家人の間で締結されます。
入居後のトラブルについても、基本的に不動産業者は介入しないとお考え下さい。大家と借家人のトラブルは当事者同士で解決するか、法廷に持ち込むしか解決方法はありません。不動産業者が借家人の側に立って、大家と交渉することはありません。
パリには様々な不動産業者が存在します。インターネットで仲介するだけの業者もいれば、事務所を構えて営業している業者もいます。
きちんとした仕事をしている業者もいれば、詐欺同様の手口(請求の際、常に現金払いを要求してくるのが特徴)で金銭を受け逃げする業者もいます。
どのような仲介人、業者が悪徳であるかという判断は難しいものです。また、悪徳業者の場合、契約時に大家もしくは大家代理人が同席しないことが多く、契約を終えお金を支払った後に気付くことがほとんどです。当地では不動産業者には免許登録の義務が課せられています。業者が免許登録を行っていることを確認することが、詐欺まがいの業者を避ける一つの方法といえます。
住居として住む限り、建物や家具などは使用に伴い減耗します。基本的には退去時に現状復帰することになりますが、減耗や回復の程度について大家と借家人の見解が異なり、大家から一方的に補償を求められることもあります。これについては、双方で話し合って決着するしか方法がありません。退去時には原則的に入居時とほぼ同じ状態であることが重要です。
フランスは契約社会であり、文書記録社会です。口頭だけで記録が残らないやりとりは借家人にとって不利なだけです。
インターネットのメールのやりとりも後から細工ができるため、決定的ではないとお考え下さい。
入居時の住居物件状況確認・物品確認(état des lieux, inventaire)は必ず詳細にチェックし、内容を文書で残すと共に写真(デジタルではなくフィルム写真)を残し、大家と共通認識を持つことを勧めます。
何が書いてあるか分からない契約書や、口頭での簡単な説明のみで契約書に署名することは、リスクをすべて背負うことになりますので要注意です。
契約書への署名は慎重になることが必要でしょう。また、支払った金銭の領収書は必ず受け取りましょう。
インターネットが発達した現在、日本にいながらフランスのアパートを決めたりすることができるようになりました。
しかしながら、トラブルの多くは実際の物件を見ないで契約も交わさないまま物件を決め、銀行送金したり契約や約束事を書面に残さないまま進めてしまうことから発生しているように見受けられます。
お金を振り込んだ後や契約した後に不都合が生じても損害が回復されることはまずありません。
契約時にはきちんと書面を確認しましょう。